1)味が分からないと自分のカラダを守れない

 

味が分かるということも「食」を知っていることと言えるでしょう。
5月のコラム(『「食を知る」ことは「身を守る」こと』)でも触れましたが、「ニラ」を「スイセン」に、「あじさいの葉」を「青シソ」に間違えて食べたことで嘔吐・めまいなどを起こし食中毒になったという事例が多数あります。
「ニラ」も「青シソ」も強い香りが特徴。大人たちにとっては当たり前のことかもしれませんが子どもたちにとってはそうとは限りません。
ニラとスイセンが良く似ているという知識があったとしても、実際に口に入れたときそれがニラの味かどうか気づくことができなければ何の意味もありません。食べた経験がなければ違いに気づくことができないでしょう。
ですから、食べ物の知識を頭に詰め込むことも大事ですが、子どもたちにはできるだけたくさんの種類の食べ物を食べる経験をさせてあげることで、食べて分かる「味覚」を育てることができるでしょう。

 

同じように、自分たちのカラダを危険から守るためには、食べ物の腐敗を自分で判断できなくてはなりません。
例えば鶏肉が腐っていたとしましょう。
表面の変色や繁殖物で見て分かる場合もあれば腐敗した臭いで気づく場合もあります。触ってみて表面のヌルヌルで気づくこともできます。ただし、これらは調理前のもの。
もし調理されたものが出されたのであれば気づきにくい場合もあります。
しかし、味覚や嗅覚が正常に働いていて、新鮮なものの味を知っていれば、食べてみるとその腐敗に気づくことができるでしょう。

 

このように味覚を正常に育てるということはカラダを危険から守ることにつながるのです。
2)味覚が鈍いと自分のカラダを守れない

 

医者に「血圧が高すぎます、今日から減塩食を心掛けてください。」と言われたとしましょう。
しかし、味覚は人によって異なるもの。高血圧の人は日ごろから濃い味付けを好む傾向があるので、塩分を控えめにしたつもりがそれでもまだ塩分が高い場合も考えられます。

 

また、これは実際に私が栄養指導をしていたときにあったお話です。

ある患者さんが医者に減量するように言われたので、私はその患者さんに体重を落とす食事の工夫の一つとして、お肉は脂肪の量が多いので、たんぱく質は大豆製品で摂ってみましょう、豆腐がおススメです。と話しました。 その患者さんは、私に言われたとおり豆腐を毎日のように食べられたのですが体重は一向に減りません。

よくよく聞いてみるとその患者さんは、「ゴマ豆腐」を食べていたそうです。

それでは体重が減るはずがありません。

ゴマ豆腐は名前こそ「豆腐」ですが、材料は脂肪分が豊富なゴマの練って葛粉や片栗粉で固めたもの。

大豆の味が分かるひとなら、その風味や味でゴマ豆腐が大豆でできた豆腐でないことはわかっただろうし、栄養の知識があればゴマ豆腐でたんぱく質が積極的に摂るのは難しいと判断できたでしょう。

 

(私は自分自身の説明不足や「知ってて当たり前」の姿勢で患者さんと話をしていたことを深く反省した出来事でもありました(>_<))

 

このように食に関する知識と味覚に乏しくては、いざいというときに食生活を良い方向へ改善することができず、当然のことながら体調はなかなか快方へ向かいません。
結果、自分ではどうすることもできず、最終的には医療に頼らざるを得なくなり、食事は味気ないいわゆる病人食を食べる食生活になることでしょう。

 

繰り返しになりますが、子どもたちのカラダを様々な危険から守るには「食べ物の知識」を教えるだけでなく、「味覚」を育てることも非常に大切なことなのです。

 

 

ご参考→「子どもの味覚を育てるには」http://vegesta.jp/nutrition/1107/